小説駅伝「青い林檎」(4)
滋賀咲くブロガーのannaさんから始まった小説駅伝。
「"滋賀咲く大賞"目指して書くことが好きなお仲間で小説駅伝を書いてみることになりました。」
なぜにごろぉが選ばれた?(笑)
一区 やま桃さん「みんなで楽しく山歩き」
二区 風さん 「風のつぶやき」
三区 ごろぉ
四区 kenichi.さん「Glamourous sky」
五区 オレンジさん「ツッコミ専門」
アンカー annaさん「びわ湖のくじら。。。」
風さんからのタスキ、確かに受け取りました。
kenichi.さん、助けてね(笑)
(裕也??)
一瞬自分の目を疑った。
でも紛れもなくそこにいたのは裕也だった。
裕也は高校を卒業した後、東京の大学に進学し、今はそのまま東京の製薬会社に勤務している。
進学して東京で一人暮らしている間も、こっちに帰省してくる度に連絡があり、都合が付けば、いいや、無理矢理都合を付けてでも会っていたぐらいだった。
最後に裕也と会ったのは2年前の暑い夏の日の、この喫茶店だった…
「真理子?」
不意を突かれた真理子は、自分の名前が真理子であることすら忘れるぐらい、裕也の言葉が耳に入らなかった。
「真理子?」
2度目の呼び掛けに我に返り、目の前にいる裕也を現実と受け入れることができた。
「どうして、ここにいるの?」
あれから元気にしているのか?仕事は上手くいっているのか?新しい彼女はできたのか?
聞きたいことは山ほどあるのに、言葉にならなかった。
「友達の結婚式で帰ってきてるんだ。」
夏は仕事でバタバタして帰省できず、有休を使い、1週間こっちに滞在するようだ。
製薬会社では出世だの成績だの、ギスギスした人間関係で、裕也は都会の人情味の希薄さに昔の人懐っこい笑顔が薄れているように感じた。
雪のせいで15分電車が遅れたこと。電車が遅れたことで、豊に出会ったこと。豊に出会ったことで、この喫茶店に足が向かったこと。全ての偶然が重なり、奇跡という言葉以外の何でもない形で裕也と再会した。
窓の外を見つめる裕也を見ながら「苦そう…。いつもそうだったな。」
砂糖もミルクも入れずにコーヒーを飲み、外を見つめる裕也を見ていたことを思い出した。
コーヒーが苦手な真理子だったが、裕也と来るこの喫茶店が大好きだった。
2年の空白を感じさせないぐらい途切れることなく会話は続いた。なのに何をしゃべったのか覚えていない。あっという間の一時間。時間を忘れて裕也との時間を過ごした。
「じゃ、いくよ。」
「元気でね。」
そう残して、裕也は先に席を立った…
「すみません。体調がすぐれないので、今日は休ませてもらいます。」
真理子は会社に電話をし、喫茶店を後にした。